M&A仲介とFAの違いとは?売り手が知るべき手数料・利益相反・選び方

2026/10/31

発信元:株式会社中小企業ファイナンシャルアドバイザリー(CFA)

会社・事業の譲渡・売却や事業承継を考えるとき、「M&A仲介サービスとファイナンシャルアドバイザリー(FA)サービスは何が違うのか」「どちらの会社・サービスに依頼すれば、自社に合う条件で進められるのか」と迷う経営者は少なくありません。

M&A仲介とFAの最も重要な違いは、同じ案件で「誰から依頼を受け、誰の立場で助言するか」です。 仲介は売り手・買い手の双方から依頼を受け、両者の間で窓口・調整をします。一方、FAは売り手または買い手の一方から依頼を受け、その依頼者側の意思決定を支援します。[1]

先にお伝えしておくと、「FAなら必ず高く売れる」「仲介なら必ず不利になる」とは言えません。契約上の立場は最も重要な要素の1つですが、加えて、担当者の専門性、買い手候補の探索力、費用、契約条件まで確認する必要があります。

この記事では、売却を検討する中小企業の経営者に向けて、仲介とFAの比較、手数料の計算例、売却後に残るリスク、依頼先を選ぶための確認事項を解説します。CFAはFA専門会社ですが、本記事では仲介の利点とFAの限界も含めて整理します。

1.M&A仲介とFAの違いを比較表で確認

FAは、Financial Advisor(ファイナンシャルアドバイザー)の略称です。その助言サービスをファイナンシャルアドバイザリーと呼びます。売り手が依頼する場合は「売り手側FA」、買い手が依頼する場合は「買い手側FA」です。[1]

項目 M&A仲介 売り手側FA
M&A会社にとっての依頼者(お客様) 一般的には、売り手と買い手の双方 売り手側
支援の基本的な立場 両当事者の間で窓口・調整を行う 売り手側の目的・条件を踏まえて助言する
報酬の受領先 一般に売り手と買い手の双方。実際の報酬負担は契約による。 依頼者
条件が対立したとき 両当事者への説明・調整と利益相反管理が重要 売り手側の選択肢、譲歩の範囲、リスクを検討する
買い手探索・進行管理 契約内容に応じて実施 契約内容に応じて実施
最終的な売却判断 売り手自身が行う 売り手自身が行う

※契約上の役割を比較したもので、各社の能力や成果の優劣を示す表ではありません。実際の支援範囲は契約ごとに確認してください。[1][2]

大切なのは、会社名や担当者の肩書きだけで判断しないことです。「M&Aアドバイザー」と名乗っていても、その案件では仲介として双方と契約することがあります。「御社は、この案件では誰と契約し、誰の立場で動きますか」と確認しましょう。

2.仲介とFAはどちらがよい?メリットと注意点

仲介の利点は、双方の窓口をまとめて調整できること

売り手と買い手が共通の支援者を通じてやり取りできれば、日程調整や情報の受け渡しをまとめやすくなります。中小企業の候補先との接点や案件進行の仕組みを持つ仲介会社は、相談先の選択肢になります。

ただし、窓口が一つであることと、自分に対してアドバイスをしてくれること、助言を受けられることは別です。例えば、売り手は高い価格を希望し、買い手は低い価格を希望する場面では、双方の希望を同時に最大化することはできません。仲介に依頼する場合は、こうした対立をどのように説明・調整するのかを確認することが重要です。

中小M&Aガイドライン第3版では、仲介者による特定の買い手への不当な便宜供与や、リピーター優遇による不適切な価格誘導など、禁止される利益相反行為が具体化されています。仲介という仕組み自体と、不適切な運用は区別する必要があります。[2]

売り手側FAの利点は、買い手から報酬を受け取らず、売り手の立場で助言できること

売り手側FAを利用する意味は、単に価格交渉を任せることだけではありません。例えば、「譲渡価格は多少下がっても経営者保証を残したくない」「従業員の処遇を具体的に確認したい」など売り手として何を重視し、どこまで譲歩できるのかを整理した上で、自分にとってのアドバイスを受けられることに意味があります。

これが、相手方である買い手からも手数料をもらう仲介の立場だと買い手もお客様となるため、売り手に対するアドバイスをすると利益相反行為になる可能性があります。また、ある買い手は「その条件を承諾する代わりに手数料を下げてほしい」、ある買い手は「その条件は承諾できないので売り手を説得してくれたら手数料は契約通り払う」というケースがあった場合、各買い手と仲介者との交渉の影響を受ける可能性があります。

このように、相手方からも手数料をもらう仲介ではなく、売り手自身の意思決定を支える専門家が必要かという視点で、FAの利用を検討すると分かりやすくなります。

FAでも利害のずれや実務能力の差はなくならない

片側FAは、同じ案件で売り手・買い手双方を依頼者とする構造とは異なります。しかし、それだけですべての利益相反や利害のずれがなくなるわけではありません。

例えば、成約時にのみ成功報酬が発生する設計であれば、FAにも取引成立を重視する経済的な動機が生じ得ます。相手方と交渉がこじれるほどに強硬な交渉は、FAにとっても利益を逸してしまうことになります。したがって、一般的には成約を前提として動くことは仲介と同じともいえます。

また、片側FAであっても、適切な買い手を探せるか、価格の根拠を説明できるか、契約上の論点を把握できるかは別問題です。「仲介かFAか」という立場と、「担当者に何ができるか」という能力を、分けて評価してください。

3.手数料の違いは「料率」ではなく「計算の土台」と「総額」で見る

M&Aの費用は、仲介かFAかという名称だけでは決まりません。成功報酬のほか、着手金、月額報酬、中間金、最低報酬などの設定も支援機関ごとに異なります。[3]

同じ5%でも、1,000万円の差が生じる計算例

レーマン方式は、報酬の算定基準となる金額の区分ごとに料率を適用する方式です。比較時には、その基準が株式の譲渡対価なのか、負債を加えた金額なのかを確認します。[3]

以下は、計算の違いを示すための仮定の例です。CFAや特定の仲介会社の見積額ではありません。

前提は「株式譲渡対価3億円」「対象会社の負債総額2億円」「5億円以下の部分に5%」「最低報酬1,000万円」とします。消費税、着手金、中間金、その他の費用は含めません。

項目 株式譲渡対価を基準にする場合 株式譲渡対価に負債総額を加える場合
報酬の算定基準額 3億円 3億円+2億円=5億円
料率による計算 3億円×5% 5億円×5%
成功報酬 1,500万円 2,500万円
差額 ― 1,000万円高い

この例では、料率は同じでも算定基準の違いで費用が変わります。M&A支援機関登録制度の手数料計算ツールでも、株式価値、企業価値、移動総資産など、基準の違いが示されています。なお、「企業価値」と「移動総資産」は同じ意味ではありません。[3]

最低報酬と「成功」の定義も確認する

同じ仮定で譲渡対価が1億円の場合、5%で計算すると500万円ですが、最低報酬1,000万円が適用されるなら、成功報酬は1,000万円となります。料率だけでなく最低報酬金額も確認することが大切です。

また、見積りを受けるときは、退職金、役員借入金の返済、個人所有の不動産などが算定基準に含まれるかも確認しましょう。さらに、「成功報酬は最終契約の締結時に発生するのか、代金決済・株式移転等のクロージング時に発生するのか」「成約しなかった場合に残る費用は何か」まで書面で確認してください。[1][4]

買い手が負担する費用も、売り手に無関係ではない

買い手が予算を考える際には、売り手への支払額だけでなく、自社のアドバイザー報酬や調査費用なども検討対象になります。仲介を利用する場合に相手方の手数料を確認することも重要であり、中小M&Aガイドラインでは、その説明が求められています。[2][4]

売り手側FAが買い手に報酬を請求しない場合、そのFAへの買い手側支払は発生しません。ただし、買い手が別のFAや弁護士等を起用すれば、別途費用が生じます。買い手側の費用が減ったとしても、その分が必ず売却価格に上乗せされるわけではありません。

4.売り手が比較すべきなのは、提示価格だけではない

最初の価格提示と、最終的な受取額を分ける

初期的な企業価値評価や価格の目安は、実際の買い手がその金額で購入することを約束したものではありません。M&A支援機関登録制度の株式価値計算ツールも、算定結果は参考値であり、実際の価格は売り手・買い手の合意で決まると説明しています。[6]

依頼先を比べる際は、提示された金額の高さだけでなく、根拠となる利益、資産・負債、事業の見通し、想定する買い手像を説明してもらいましょう。

例えば、一時的な支出を除いて利益を調整するとしても、その支出が本当に繰り返されないのかを検討する必要があります。オーナーの役員報酬を減額して利益を試算する場合も、後任経営者の人件費が必要なら、その費用を無視した評価は慎重に扱うべきです。

売り手側の支援とは、弱点を隠して高く見せることではなく、強みとリスクを整理し、説明できる根拠を準備することです。

価格・支払条件・保証解除を一緒に比較する

次は、売却条件を比較するための架空の事例です。CFAの成約実績ではなく、条件の見方を説明するために作成しています。

比較項目 買い手Aの提案 買い手Bの提案
提示価格 最大3億円 2億8,000万円
クロージング時の支払 2億円 2億8,000万円
残額の支払条件 1億円は買収後の業績条件を満たした場合 後払い・業績連動部分なし
経営者保証 成約後の解除を予定しているが、金融機関との調整は未了 金融機関との調整を踏まえ、解除を実行条件に組み込む提案
従業員の処遇 方針の説明のみ 対象・期間・条件を契約等で具体化する提案

提示価格だけを見るとAが高額です。しかし、クロージング時の受取額、後払い部分の実現可能性、保証が残るリスク、雇用条件まで含めると、検討結果は変わり得ます。

この表だけでBが必ず有利とも決められません。買い手の資金力、業績条件の達成可能性、他の契約条件、売り手の希望を併せて比較する必要があります。

経営者保証は、株式を売れば自動的に消えるとは考えない

売却後に会社の借入金の経営者保証が残ると、株主や経営者でなくなった後も責任を負うおそれがあります。「買い手が後で外してくれる」という説明だけで進めず、保証の相手方である金融機関等との調整が必要です。

金融庁の監督指針でも、M&A成立前の事前相談、保証解除・移行をクロージング条件に設定するための支援、実現しなかった場合を想定した条項などが示されています。解除できない場合の対応を含め、実行前に確認してください。[5]

譲渡後の責任まで含めて条件を確認する

売却条件には、代金のほか、表明保証違反等に伴う補償、支払額の調整、引継ぎ期間、一定の競業を制限する義務などが含まれる場合があります。価格を上げる代わりに重い義務を負うのであれば、その負担を別に検討すべきです。[4]

契約条件の法的な評価は弁護士、税負担や手取りの試算は税理士等に確認し、FAの財務・事業面の助言と組み合わせて判断してください。

5.M&A仲介会社・FA会社を選ぶときの8つの質問

比較のための面談では、次の質問を同じ条件で各社に伝えると、説明の具体性を比べやすくなります。中小企業庁の契約締結時チェックリスト等を踏まえ、売り手向けに整理したものです。[1][4]

確認項目 面談で聞きたい質問
① 契約上の立場 この契約は仲介ですか、売り手側FAですか。買い手等から報酬や紹介料を受け取る関係はありますか。
② 担当者と支援範囲 実際の担当者は誰ですか。類似案件で何を担当しましたか。企業価値評価、買い手探索、条件交渉、DD対応、実行準備のどこまでが報酬に含まれますか。
③ 買い手の探索と確認 候補先はどのように探しますか。既存の接点先ですか。
④ 価格の根拠 提示価格はどの資料と前提に基づくものですか。価格が下がる可能性がある論点も説明してもらえますか。
⑤ 費用の総額 算定基準、料率、最低報酬、別途費用、消費税、支払時期はどうなりますか。想定価格が変わった場合の見積りも出せますか。
⑥ 情報管理 社名を誰に、いつ開示しますか。開示前の同意確認と秘密保持契約はどう扱いますか。
⑦ 契約の制約と解約 専任条項、直接交渉の制限、中途解約、契約終了後に報酬が発生するテール条項は、どの範囲・期間で適用されますか。
⑧ 第三者の確認と売却後のリスク 弁護士・税理士等への相談やセカンドオピニオンは可能ですか。経営者保証、代金の後払い、補償責任を誰と確認しますか。

特に、秘密保持に関しては開示先と秘密保持の手順を確認して進めるべき事項です。登録制度のFAQでは、社名開示前の売り手の同意取得と、候補先との秘密保持契約が示されています。[4]

また、M&A支援機関登録制度への登録は、依頼先を調べる際の確認項目ですが、国が支援サービスの品質を保証するものではありません。登録の有無に加え、実際の担当者と契約内容を確認してください。[9]

6.よくある質問

中小企業でもFAに依頼できますか?

依頼先の対象規模と料金が合えば、中小企業でも検討できます。CFAも中小企業向けのFAサービスを提供しています。ただし、想定する譲渡額に対して最低報酬の負担が大きくなる場合があるため、最初に対象規模と費用を確認してください。[7]

売り手の手数料が無料なら、仲介ではなくFAですか?

無料という料金表示だけでは判断できません。仲介かFAかは、当該案件の契約関係と助言する立場を確認する必要があります。売り手の直接負担だけでなく、誰が支援者へ報酬を支払うか、その支援者が誰に対して責任を負うかを確認しましょう。[1][4]

買い手候補が既に決まっていてもFAに相談する意味はありますか?

買い手探索が不要でも、提案価格の検討、条件整理、資料準備、調査対応、最終契約に向けた調整といった論点と実務的負担は残ります。必要な支援を絞り、その範囲に対応する契約・見積りを依頼することをおすすめします。

仲介会社と契約済みでも、別の専門家へ相談できますか?

まず既存契約の秘密保持、専任条項、直接交渉の制限等を確認してください。第三者の意見を聞くことと、別の会社に買い手探索を重複して依頼することは分けて考える必要があります。資料を共有する前に、相談先と共有できる情報の範囲を確認しましょう。[1]

FAを付ければ、必ず高く売却できますか?

保証されません。価格は事業内容、財務状況、買い手の評価、競争環境、契約条件等を踏まえて合意されます。FAには、価格だけでなく、条件の比較、リスクの把握、売却を見送る選択肢を含めた判断材料を求めることが重要です。[6]

同じ会社の担当者を売り手・買い手に分ければ、それぞれ独立したFAですか?

担当者が別であることだけでは判断できません。契約主体、報酬の受領先、情報管理、意思決定の仕組みを確認する必要があります。「担当が二人いる」という説明ではなく、売り手側だけの立場で助言する契約になっているかを確かめてください。[1][4]

7.CFAの片側FAサービスについて

株式会社中小企業ファイナンシャルアドバイザリー(CFA)は、公認会計士が設立したM&AのFA専門会社です。売り手・買い手双方から報酬を受け取る仲介は行わず、依頼者側の立場で支援する方針を掲げています。[7]

代表者は、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーでの業務や、中小企業向けM&A仲介・FA業務を経験しています。詳しい経歴は会社概要でご確認いただけます。[8]

FAサービスでは、初期的な企業価値評価、企業概要書の作成、候補先の選定・打診、交渉支援、デューデリジェンス対応、最終契約に向けた支援を提供しています。セカンドオピニオンにも対応しています。[7]

報酬体系は、譲渡金額(オーナー受取額)を基準とするレーマン方式で、最低成約報酬は1,000万円(税別)です。個別案件の業務範囲・算定条件・費用は、契約前にご確認ください。[7]

売却を決める前の相談、買い手から提示された条件の検討、仲介とFAの選択について、初期相談は無料です。相談時点で売却を決めている必要はありません。[7]

会社売却・事業承継についてCFAに相談する

FAサービス・報酬体系を確認する

8.まとめ:会社を売る前に、「誰が自分の側で考えるのか」を確認する

M&Aの相談先を選ぶ際は、知名度、初期の提示価格、手数料率だけで決めないことが重要です。

確認すべきなのは、支援者の立場、実際の支援能力、費用の総額、そして売却後に残る責任です。従業員の処遇や経営者保証を重視するなら、その希望を価格と同じように比較表に書き出してください。

仲介かFAかを理解することは出発点です。そのうえで、自社の状況と希望に合うサービスを選び、根拠のある条件比較を行うことが、納得できる会社・事業の譲渡・売却や事業承継につながります。

資料確認日:2026年10月29日。本記事は一般的な情報提供を目的としています。架空の計算例・比較事例は、実際の成約実績、見積り、成果を示すものではありません。個別案件の契約・税務・法務判断は、契約書や具体的な事情に基づき、弁護士・税理士等の専門家と確認してください。

出典・参考資料

  1. 中小企業庁『中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料』参考資料6:仲介契約・FA契約締結時のチェックリスト
  2. 経済産業省『中小M&Aガイドラインを改訂しました』(2024年8月30日)
  3. M&A支援機関登録制度『手数料の簡易計算』
  4. M&A支援機関登録制度『よくあるご質問』
  5. 金融庁『主要行等向けの総合的な監督指針』経営者保証・M&Aに関する事項
  6. M&A支援機関登録制度『株式価値の簡易計算』
  7. 株式会社中小企業ファイナンシャルアドバイザリー:サービス・報酬体系・相談案内
  8. 株式会社中小企業ファイナンシャルアドバイザリー:会社概要・代表者経歴
  9. M&A支援機関登録制度公募要領(令和8年度):登録は支援品質を保証するものではない旨の注意事項